小僧

 菊池寛が二十五歳未満の者は小説を書いてもしょうがないというので、タケちゃんは小説を書かないのだという。でも、タケちゃんは将来は小説家になるつもりだから、小説は書かないけれど小説を書く練習をしている。こっそり小説を書くための練習をしている。空を仰いで志賀直哉の『小僧の神様』を諳んじるのだ。とても澄み切った清らかな調べが、爽やかな風に乗り、宙を舞うのだ。

 

(2015年5月16日)