あかしお

 インターネットで見つけた海に行きたいと思って車を走らせて二時間、着いた海は赤い色に染まっていた。赤潮ってこういうことなのだろうか。ちがう気がするけれど、僕の中で生まれた言葉はそれだった。泳ぎ始めるとたいしたことはなかった。海は赤い色に染まっているだけで、本当にただそれだけだった。

 僕はくらげに刺されて、二週間寝込んだことがあったけれど、その時は40度の熱が出て大変だった。もう二度と海には行くまいと思った。三日経ったら忘れて、五年目の今日、再び海にきた。

 赤い海の水を手ですくうと、不思議と透明である。ここに赤い色素が溶けているとは到底思えないほどだ。塩辛いのはいつもの海のままだ。いつもの、と言ったって、五年前の味だから思い出せないはずなのに。