ジリジリ

 起き抜けに出された素麺を啜って、喉に潤いを与えるのが夏のハイライト。蒸し上がった髪の毛が完全に縮れてて、幼い頃に遊んでたサコちゃんの髪の毛にそっくりだなと思いながら、シャワーを浴びて生き返ってる。でも、やっぱ夏だし、伸ばしっぱなしの髪はよく抜けて、手に絡まるのはもうこれちょっとお化けみたいだけど、知るもんかって流しちゃう。嘘、本当は一本ずつきっりち摘んで集めてから捨てる。だって、排水口に溜まった髪の毛なんて、それだけで貞子、ヌメる感触はまさに貞子。もちろん貞子なんて知らないし、『リング』はそもそも観たことない。映画って観てるの疲れるから。二時間じっとしているのは辛い。昔から多動だよねって言われてきたけど、まあ、それはよくわからないんだけど、とにかく手がやたら動く。気がつくと鶴折ってる。っていうか、鶴しか折れない。折った鶴は、あれ、いつもどうしてるんだっけ? そういえば、知らないうちに消えるよね、折り紙って。折ったら満足しちゃうんだよね、結局。そういう意味では文章も同じ感じあるよね。日記つけてるんだけど、あんまり読み返すこはないんだな。書いて満足して、よく書けた時は翌日か翌々日に確認することあるけど、でもそれでおしまい。まあ、歳とったら思い出して読むのかもね。でも、馬鹿らしくてちゃんとは読めないだろうね。だから書いておしまい。そういう儚さ? 蝉みたいな。そう蝉みたいな儚さ。さっきからウルサいんだよね、耳に張り付いてさ、鳴き声が。でもね、蝉だって真剣に生きてるんだもんね。少なくとも昼頃に置き出してくるような自堕落な人間よりはさ、真剣に生きてるわけよ。その真剣さ、見習いたいとは思うんだけど、やっぱりそれは無理。だって、真剣ってアツいじゃん、もっとクールにいこうよ。頭冷やせって。っていうか、おまえ、蝉の抜け殻みたいに無言だな。

 

(2015年7月27日)