あなたの不安ってあなたから既に逸脱してますよねってホンジョウさんに言われて戸惑った。いやいや、わたしの不安はわたしのものでしょって反論したかったのだけど、喉がすっかり鈍ってしまって、何も言うことができない。いや、本当は喉に油が塗られていたのだけど、わたしの中の誰かが反論することを押しとどめたのだった。わたしの中の誰かーー誰なのかはわからないけど、すくなくとも四丁目のヨッちゃんではなさそうだ。わたしがまごついていると、ホンジョウさんは笑った。憎らしい笑顔。わたしは慌ててビールを呷って、ポテトフライを口に押し込む。言葉、言葉を下さい。気の利いた、優しい言葉を……。

 

(2015年5月24日)