菜の花摘んで 麗らかな花弁、

   鶏が啄む。

鉄網の格子に ゴルフボールを挟んで喉が鳴り、

     果敢な蜜蜂一匹、

        割れた地面で蟻に運ばれてる。

  四角い窓から切り取った 母の面影を、

         透明の瓶に詰めて 土をかける。

指にこびりついた土、

  指の腹で渇いた土の名残を、

   こっそり舐めとって振り返る お庭の菜の花、

          黄色い花、

  揺れる瞼。

 

耳に詰まった 蜜蜂を取り出して、

     鶏の喉を鳴らしてみせる。

 蟻を踏みつけて、

   頼りない唇を ぐっと噛み締めている。

    菜の花、

    黄色い花、

    蜜の花。

母のスコップを押し上げて、

   隠す、隠す、

 隠された睫毛の 柔らかい匂い。

  靴の跡。

 

埃のついた頬に 唇を近づけて、

   そっと口づけ、

 雲雀の耳打ち。

 

――貴女、彼方、何処か、ここ。

     菜の花揺れて――微睡む母。

 

(2015年5月11日)