暮れ

 

隠された墓標を背にして

枸橘の花が咲くほうに向き直る

夕暮れのトンボに

小さな石ころを投げつけて

お前の渇いた満足を

真っ白いペンキで塗りつぶす

そこにできた水たまりから

いつかの老婆が現れる

しなびた着物をきて

薄笑いを浮かべている

お前の渇いた満足を引きずって

薄笑いを浮かべ続けている

なあ、

お前が投げたかったあの石は

茂みに落ちて

草臥れた空き缶を打ったんだ

なあ、

お前のその渇いた満足が

疲れきってしまわないうちに

あのアルミ缶を拾って

缶蹴りでもしてみないか

 

(2015年6月6日)